ITコンサルの日常

ITコンサル会社に勤務する普通のITエンジニアの日常です。

「学問のすゝめ」読了

学問のすゝめ―人は、学び続けなければならない

学問のすゝめ―人は、学び続けなければならない

あの一万円札で有名な福沢諭吉の本です。
慶応大学の創始者でもあるのですね。
そもそもこれを読むきっかけになったのは、梅田望夫さんと、齋藤孝さんの対談が本になった「私塾のすすめ」の中で引用されていたことです。


この本、タイトルについては、恐らく知らない人の方が少ないんじゃないかと思います。
社会の授業かなにかで、一度は聞いたことがあるはず。
ただ、読んだことがある人っていうと、随分少なくなってしまうのではないでしょうか。
本書は、2001年にリメイク(?)されたもので、言葉遣いも現代語となっていますので、安心して読めますよ。

p16 まずやらねばならぬのは、日常業務に必要な実用の学問である。

古文や和歌、文学や漢文など、現実的でない(日常生活に役立たない)学問は二の次にする。
文字を習う、手紙の文章、帳簿の付け方、そろばんの練習、はかりの計量法をおぼえる。
地理学、物理学、歴史、経済学、倫理学を学ぶ。

現代で言えば、コンピュータリテラシーも入るでしょうね。
倫理学とか、ちょっとかじってみるには面白そう。

p42 自分自身に独立の自覚がない者は、外国人と交わっても、自己の権利を主張できない

独立の精神なき者は、つねに他人をあてにする。他人をあてにする者は、必ず他人の態度を気にする。他人を気にする者は、必ず他人にお世辞を使う。こうして、つねに相手を気にし、ゴマをする者は、いつかそれが習性となり、面の皮が厚くなり、恥知らずの人間となる。

これ、厳しいなあ。普通の会社員なんて、みんなこれに該当しちゃうんじゃないかな。

p72 税金は払おう

具体例で示してあったので、引用してみる。

もともと罪ある者とは悪人であって罪なき者とは善人を言う。いま悪人が危害を加えようとして父母妻子を殺そうとしたら、善人はこの悪人の暴力から身を守り、ときには捕まえてたたきのめしてもよい理屈だが、一人の力ではとてもできはしない。たといできるにせよ、それには莫大な防犯用の費用が必要となる。そこで国民の代表として政府に保護を依頼し、その代わり役人の給料はもちろん、政府の諸費用をすべて税金でまかなおうと約束したのである。

というわけで、結構見えないところで国(政府)から恩恵を受けていることもあるのではないかと思いますが、見えづらいのが問題なのかなあ。小泉元総理とか、升添厚労相とか、分かりやすさを前面に出した人には、国民の指示も厚いですよね。
わりと生活に近いところで地道にいいことしてますみたいなアピールをもっとしても良いのでは?

p108 この人は単に蟻と同様のことをしただけ

男子が成人し、商工業や官界に職を得て、..なんとかわが家を建て..望みどおりに結婚もする。..子も生まれ、一通りの教育もして、不時の出費に備えた貯金もできた。自分はこれで独立の生活を得たと彼は満足する。世間も、あの人は立派な人物だと評価し、彼自身も得意になったとする。
 諸君はこの人物をどう見るか。わたしは彼を立派な人物だとは思わない。右の世間の評価には大きな誤りがある。この人は単に蟻と同様のことをしただけで、蟻以上のものではない。..しかし、これだけの結果で万物の霊長たる人間としての、真の目的を達成したとは、わたしにはどうしても思えない。

これまた厳しい。果たして自分はこの世の中に、何を残すことが出来るのか?
これは、「自分は何がしたいのか、どうなりたいのか」に通じるところがあるような気がするなあ。
よくよく考えねば。

p146 見識を高める唯一の秘訣

けっして自己満足しないことに尽きる

学ぼうと思えば、いくらでも教材が手に入るこの世の中なので(Webにもごろごろしてますよね)、自己満足せずに学び続けられると思います。
たったいま、iKnowに登録してみました。

p147 懸命に勉強することは人間として当然

懸命に勉強することは人間として当然で、ことさら誉めるにも及ぶまい。人間の生存理由には、もっと高次なものがあるはずだからである。

厳しいよこれまた。うーん。。

p167 人生の「損益」計算のしかた

これまた面白いメタファ

現在自分はどんな仕事や学問をし、どこまで成功したか。いま、どんな品物を仕入れて、それをどう売り、活用するつもりか。心という店の戸締まりはちゃんとしているか。道楽とか怠け心という使用人のために、経理に穴があいたことはないか。来年も同じ経営法で大丈夫か。ほかに工夫はないかなど、精神面での帳簿を点検し、すべての面で決算してみることが必要なのである。

いま、どんな品物を仕入れて、それをどう売り、活用するつもりか。これは裏を返せば、活用する見込みがないものを仕入れても在庫過剰になってしまうだけ。とも読めます。
これは昨日の「対象範囲をはっきりさせて、やたらなものに目をくれないことである。」にも通じるなあ。
まずは活用計画があって、それから仕入れる。なんか商売としては当たり前なんだけど、勉強としてこれが出来てないですね。

まとめ

全体的な感想としては、諭吉の「怒り」に満ちていたように感じました。
私塾のすすめ」の中にも、あるべき理想から外れ過ぎてる現実に怒りを覚えるみたいなエピソードが載ってましたが、諭吉が思い描く日本と、現実の日本との差異があったのでしょう。
それに対して本書では、こういうことをやりなさいとか、こういうことはやめなさいとか、具体例を交えて書いてある。正直なところ、結構厳しいことも書いてあるのですが、それだけに応えるものがあります。
若い人ほど読んだ方が良い本だと思います。