「どくとるマンボウ青春記」読了
- 作者: 北杜夫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2000/09/28
- メディア: 文庫
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なんとまあ無茶苦茶なってところもありますが、色々と参考になるところもあります。
やっぱり昔の人(と言っては失礼だが)は、海外文学に多大な影響を受けてますね。
マンボウ氏も、かなり読書に打ち込んだことも書かれていますし、
私は今でもドストエフスキイを世界最大の作家と思っている。
ってくだりは、ドストエフスキイを一応読んだ自分としても、ちょっと嬉しかったりします。
他にも、ウィリアム・ブレイクという人の言葉を引用して、
世の中にはいろいろ都合のよい文句がある。たとえばウィリアム・ブレイクは次のごとく言っている。
「愚行を固執すれば賢者となるを得ん」
更に、
「過度という道こそ叡智の殿堂に通ずる」
これらの箴言こそ、私が見つけ出して得々となり、ボロっちい西寮での生活をやりおおせた呪文のようなものであり、守り言葉でもあった。
のようなことをおっしゃってますが、いやいや随分危険な思想を守り言葉にするもんだなあと。
いやでも、実はその裏で真実を言っているのかも知れません。
また、本の読み方については、
良書を読んで悪書を読むな、と識者は言うが、人はくだらぬ本も読むことによって、本当によい本というものを識別できるようになってゆくのではないか。
と言っていて、百選みたいな選び方をすると良書ばかりになってしまい、選書眼(なんて言葉があるのかな?)が養われないのかも。
最後に、新しいことばかりやりたがる(僕もそのうちの一人のつもりだけど、実際のところ全くついていけてない)この業界の人達に、一石を投じたと思われる言葉を引用する。
よく人は未知な分野にテーマを選ぶことが立派なことだと錯覚しがちだが、すでによくわかっていてなんの問題もないと思われる分野に新しい照明を与えることのできる人のほうが偉大なこともある。わからないことを研究するのは誰にだってできるが、わかりきったようなことになお深い謎を見出せるのは選ばれた人たちだ。
新しいことをやれば、それだけ発見はあるんだけれども、それはまあ当たり前ってことなんでしょうね。
そんなわけで、著者自身は謙遜していたけれども、僕は良書だと思いました。
他のマンボウシリーズも読んでみたいかも。(3年後?)