ITコンサルの日常

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「銀の匙」読了

銀の匙 (岩波文庫)

銀の匙 (岩波文庫)

著者の幼少時代から青年時代を語った小説。
ただし、解説にもあるが、名前は伏字になっているので、一応はフィクションという位置付けのようです。


物語自体は淡々としているので、実はそれほど面白くないのですが、場面場面の描写がすごく繊細で美しいので、とても読んでいて気分が良いです。
それは、作中で筆者が書いている、

私は常にかような子供らしい驚嘆をもって自分の周囲をながめたいと思う。人びとは多くのことを見なれるにつけただそれが見なれたことであるというばかりにそのままに見すごしてしまうのであるけれども思えば年ごとの春に萌えだす木の芽は年ごとにあらたに我れらを驚かすべきであっただろう、それはもし知らないというならば、我々はこの小さな繭につつまれたほどのわずかのことすらも知らないのであるゆえに。

という「観察眼」に尽きるのではないかと思います。
いま大人になって、「子供らしい驚嘆」を持つことはとても難しいのですが、あるいは自分の子供からそうしたものを学べるかもしれません。