ITコンサルの日常

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「人間の土地」読了

人間の土地 (新潮文庫)

人間の土地 (新潮文庫)

著者のパイロットとしてのエピソードをつづった一冊。
表紙の絵は、なんと宮崎駿氏が描いてます。氏の解説も読めますよ。


初めてパイロットとしての仕事をまかされた時を描いた「定期航空」や、砂漠に不時着してから生還するまでを描いた「砂漠のまん中で」が非常に興味深かったです。
生死をさまよった中の経験について非常にこまかく書かれていますが、意外と覚えているものなんですね。


ところで解説にもあるように、「人間本質の探究」というテーマが込められているように感じました。
僕がいいなと思ったのをいくつか挙げると、

ある一つの職業の偉大さは、もしかすると、まず第一に、それが人と人を親和させる点にあるかもしれない。
真の贅沢というものは、ただ一つしかない、それは人間関係の贅沢だ。
物質上の財宝だけを追うて働くことは、われとわが牢獄を築くことになる。人はそこへ孤独の自分を閉じ込める結果になる、生きるに値する何ものをも購うことのできない灰の銭をいだいて。

発明の完成はかくて、発明の忘却とその境を接するのだ。そして今日われらが用いる器具を見ても、目立つようなからくりはすべてすこしずつ消え失せてしまって、海がみがきあげた小石と同じほど、自然な品物となっていると等しく、使われているうちに機械がすこしずつ自らを忘れさせてゆきつつあるのも、確かに賞讃すべきことだ。

彼は自由だった、だがあまりにも無制限に自由なので、自分の重量を地上にまるで感じないほどだった。彼には、気ままな歩行を妨げる人間相互関係の制圧が欠けていた。

最後のやつなんかは、「自分の重量を地上に感じない」なんて、気の利いた表現が良い感じです。
結局のところ、人は一人では生きられないということなのかも知れません。