「山椒大夫・高瀬舟」読了
- 作者: 森鴎外
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/06
- メディア: 文庫
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森鴎外も相当有名ですが、やっぱり読んだことはありませんでした。
有名なのは「舞姫」でしょうか。
山椒大夫は、感動の再開を描いた物語。
高瀬舟(いわゆる島流しの刑で使われた舟のことらしい)は、経済観念と安楽死の是非を問うた物語で、短いながら、結構読み応えがあります。
他にもいくつか面白いところがあります。
カズイスチカより
自分が遠い向うに或物を望んで、目前の事を好い加減に済ませて行くのに反して、父はつまらない日常の事にも全幅の精神を傾注しているということに気がついた。宿場の医者たるに安んじている父のresignation(訳注:諦念)の態度が、有道者の面目に近いということが、朧気ながら見えてきた。
この文などは、どこかでもっと自分にあった仕事が他にもあるのではないかと思っているか、あるいは、これが自分の進むべき道と腹をくくったかの違いでしょう。
妄想(もうぞう)より
生まれてから今日まで、自分は何をしているか。始終何物かに策うたれ駆られているように学問ということにあくせくしている。これは自分に或働きが出来るように、自分を仕上げるのだと思っている。その目的は幾分か達せられるかも知れない。しかし自分のしている事は、役者が舞台へ出て或る役を勤めているに過ぎないように感ぜられる。その勤めている役の背後に、別に何物かが存在していなくてはならないように感ぜられる。策うたれ駆られてばかりいる為めに、その何物かが醒覚する暇がないように感ぜられる。
これも上と同じようなことを言っているような気がします。
ただ、結局のところ、「今」を一番大事にすべきだと言われているような気がします。