ITコンサルの日常

ITコンサル会社に勤務する普通のITエンジニアの日常です。

「あしたの経済学―改革は必ず日本を再生させる」読了

元経済財政担当相の竹中平蔵氏による著書。
文章も平易で分かりやすいと思うが、挿絵入りでなお分かりやすいです。


昨今聞かない日は無いのではないかというぐらい耳タコな「デフレ」について、
単にデフレスパイラルの問題があるのかと思っていましたが、こんなことも書かれていました。

 もう一つ、物価が下がり続けることによる企業にとっての最大の問題は、企業にとって絶対に下げることができないものがあるということです。従業員の給料はいざとなれば下げることも不可能ではありませんが、過去に借りた借金の額は、今年物価が10%下がったからといって、一緒に10%減らしてくれとはいえません。借りた額は借りたときのままです。したがって、仮に物価が10%下がったとすれば、実質的な借金の負担は自動的に10%増えるのと同じことになります。

こういう視点もあるのですね。


昨日、経済成長戦略策定チームの会合とかいう場で、菅直人副総理 vs 竹中平蔵慶大教授とかいう図式があったようですが、
論点は、「需要」と「供給」どちらを刺激すべきか、ということのようです。
竹中氏は本書第4章「需要と供給 世界で初めてデフレを克服する」にも書かれている通り、
「供給側を刺激して生産性を高めつつ、需要を増やそう」
という論調のようです。


理由を引用すると、

 たとえば、生産する力、稼ぐ力はきちんとあるけれども、何かのショックが原因で一時的に人々が不安になってお金を使わなくなったという状況だとしたら、その原因がなくなるまで政府が代わってお金を使い、みんなを安心させて通常どおりにお金を使うパターンに戻すことは有効でしょう。ただしこれは、生産側に問題があrのではなく、使う側(需要側)に問題があって一時的に経済が悪くなった場合です。
 現在(注2003年の本です)の日本はどちらでしょうか。使う側が一時的に使わなくなっているのでしょうか。
 1990年代に入った当初、経済が悪くなったのは一時的なものだと考えられていました。そのために、通常のパターンに戻るまでということで政府はお金を使ったわけです。しかし、10年間使い続けても決してよくなりませんでした。となると、これは一時的な理由でお金を使う力が落ち込んでいるのではなく、私たちの稼ぐ力が低下したのではないかと疑ってみなければなりません。

ということです。
もう10年もの間、需要を刺激する政策は行われたということですね。
そういえば、この間の定額給付金も、需要を刺激する政策でしたね。
うーん、なんで効果ないって分かってて(?)やるかなあ。。


もう一つ面白かったのは、小泉竹中改革路線といえば郵政民営化ですが、郵貯を民営化する理由について分かりやすい説明がありました。

 このようにリスクとリターンの評価が重要な民間のマーケットに、郵便貯金という存在があるのは大きな問題です。というのは、郵便貯金は、預けるほうから見れば、政府がやっている金融機関ですからリスクがゼロに見えてしまいます。
 本来は、ローリスクであればローリターン、ハイリスクであればハイリターンであるはずが、郵便貯金はノーリスクでローリターンなのです。結果的に、郵便貯金が金融市場に存在することで、リスクとリターンの構造が崩れてしまいます。しかも、郵便貯金の規模は巨大ですから、市場のメカニズムの攪乱要因にもなりかねません。

というわけで、近頃マスコミ等にさんざん批判されている竹中平蔵氏ですが、この本を読むと別に悪くないのではと思います。
ていうか、日本国民てやっぱりマスコミ(特にテレビ?)に踊らされてるんだなあと思います。
そんなわけで、正しい判断ができるように、もっと色々勉強しなければならないと思うのでした。