「格差社会―何が問題なのか」読了
- 作者: 橘木俊詔
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2006/09/20
- メディア: 新書
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- 現状何が起きているか
- その要因は何か
- どのような問題が起きるか
- どう対処すればよいか
といったことについて述べられている本です。
格差にも色々ありますが、本書中では再分配後所得の格差について述べられています。
最近テレビとかでもよく聞く、ジニ係数 - Wikipediaは、
この格差を測る指標で、図録▽所得再分配調査による所得格差、及び再分配による格差改善度の推移などを見ると、徐々に拡大しているのが分かります。
原因について、やはり構造改革が取り上げられていて、供給側に立った経済学(サプライサイドエコノミー)の問題点が指摘されています。
供給側に立った経済学の柱は、
- 市場原理の活用
- 規制を緩和して競争を促進し、経済の効率性を高める
- 大幅な減税政策
- 勤労、投資、貯蓄意欲の低下を防ぐ
- 福祉の見直し
- 充実しすぎると人が怠惰になるという考えのもと大幅に削減
とのことですが、次のような弊害も表れるそうです。
- 所得分配の不平等化が進行
- 財政赤字
- 税収減による
特に、市場原理の活用による、所得分配の不平等化が進行については、タクシーの規制緩和の話が分かりやすかったです。
タクシー業界では、行政側が地域によってタクシーの台数を決めていました。近年、そういう規制を撤廃して、誰でもどの企業もタクシー業界に参入できるようにしました。その結果、タクシーの数が非常に増えたわけです。タクシーの数が増えても、タクシーを利用する人の数がそれほど増えるわけではありません。したがって、一台あたりの売上が減り、タクシー運転手の収入が減ることになります。現に、タクシー運転手の年収はここ数年で相当低下したことが、統計で確認されています。企業の参入障壁を外して、どの企業でもビジネスを可能にするようにした、という意味での規制緩和の効果は、賃金の格差拡大につながったと私は判断しています。
これって、供給を増やしても上手くいかなかった例なのではないでしょうか。
また、私の考えですが、格差が生まれた結果の不平等については、いわゆるセーフティネット(生活保護とか、今話題のベーシック・インカムとか?)でカバーするとのことですが、
ただでさえ、減税によって財政赤字が生まれているのに、さらにセーフティネットでお金を使うというのは、
この赤字大国日本では無理なのではないか、などと素人ながらに思ってしまいます。
さらに、福祉を充実しすぎると人が怠惰になるとか言われると、マッチョしか生きていけない気がして息苦しくなります。
うーん、本当に構造改革って良かったの?と疑問を投げかける気持ちも分かりますね。
格差社会になった場合にどのような問題が起きるかですが、以下の点が書かれています。
- 経済効率の問題
- あまりにも低い賃金に抑えられている労働者が増える → 労働意欲を失う → 働いても仕方ないと思う
- 失業者の増加による、人的資源のロス
- 犯罪の増加
- こんな資料もあるようです。犯罪率の推移 - 少年犯罪 急増・凶悪化・低年齢化 - 楽天ブログ(Blog)
- 貧困者に対する経済援助(生活保護など)を行うことで社会の負担増加
- 倫理的な問題
- お金持ち → 勝者、貧困者 → 敗者などの固定化
特に、1,2,4番目は、経済を上向きにさせるために格差を容認しているにも関わらず、逆に経済的に悪くなってしまう要因があるというのは、逆効果な気がします。
なんとなく生きづらい世の中になったなあと思うのも、こういうところから来ているわけですね。
こうしてみると、格差社会のいわゆる上流で生きていける自信のある人は、格差社会を容認する政策を支持し、
そうでない人は、格差社会を非難するという構図になっているわけですね。
格差社会になったとしても、政府のセーフティネットが正しく機能するのであれば、問題ないような気もしますが、
もしかして、格差社会になっただけで、セーフティネットが整備されてないってのが現状なんでしょうか。
僕自身、たぶんまだ中流にいながら、いつ下流に流されるか分からないと怯える日々なわけですが、
今のところ、少しでも上流に行けるよう、努力していくのがベターだと思いました。