ITコンサルの日常

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「塩狩峠」読了

塩狩峠 (新潮文庫)

塩狩峠 (新潮文庫)

まだまだキリスト教に対する疑念の残る明治時代のお話。
キリスト教絶対反対の祖母に育てられた一人の少年(信夫)が、段々とキリスト教を信じるまでになり、ついには教会の教師となる。
最後には非業の死を遂げるという結末を迎えるわけですが、よく出来た話だなあと思ったら、解説に

塩狩峠」は一九六六年(昭和四十一年)の四月から二年半にわたって、日本基督(キリスト)教団出版局から出ている月刊雑誌「信徒の友」に連載された小説である。

とあり、なるほどと思いました。ある意味宣教の一環というわけですね。
これまた解説によると、史実を元にしたフィクションとのことです。


こないだ読んだ遠藤周作の「沈黙」を思い出しました。
日本キリスト教史(幕末から明治時代) - Wikipedia
に書いてありますが、この頃は少なくとも迫害されるということはなかったようです。
作中にも、男が街角で堂々と教えを披露するというシーンもありました。
ただなんとなく、仏教キリスト教かみたいな、二者択一の雰囲気があり、現代とはまた違った様相であることが伺えます。


ところで僕が作中で面白いと思ったのは、信夫が成長する過程で色々と考えることで、
特に面白いと思ったのは、罪に関する以下のくだりです。

(しかし、法律にふれさえしなければ、何をしてもいいというわけではない。法律にふれることだけが罪だとはいえないのだ)
...
(人に不快な思いをかけるというのも、やはり大きな罪ではないか)
信夫の同僚に、いつも不機嫌な男がいる。上司に呼ばれた時は、不承不承ながら返事はするが、同僚や給仕が声をかけても、ろくな返事をしたことがない。いつもぶすっと、むくれた顔をして、そばにいる者は何となくその不機嫌を持て余してしまう。こちらまでが不愉快になって、その不機嫌がうつってしまいそうになる。

最近こういうことが多いので身にしみるのですが、なんとかならないもんですかね。