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「おまけより割引してほしい―値ごろ感の経済心理学」読了

おまけより割引してほしい―値ごろ感の経済心理学 (ちくま新書)

おまけより割引してほしい―値ごろ感の経済心理学 (ちくま新書)

経済心理学の入門書。消費という日常の行動を解説しているから分かりやすいし、また、この本の各章末にはポイントがまとめられていて理解がしやすい。良書、おすすめです。


タイトルの「おまけより割引してほしい―値ごろ感の経済心理学」ですが、
「はじめに」で、値ごろ感をこう定義しています。

値ごろ感 = 価値(Value) / 費用(Cost)

で、値ごろ感を引き上げるには、

 値ごろ感はもちろん、高い方がいいわけだから、値ごろ感を引き上げる第一は、分母(費用)をできるだけ小さくすることにある。同じ価値を得るのでも、費用をできるだけ小さくすれば値ごろ感は必ず上がる。
(中略)
 第二は、分子(価値)をできるだけ引き上げることにある。

とある。
これで終わりじゃんとか思ったのですが、ここからさらに価値とはなんぞや、費用とはなんぞやという話に踏み込んでいきます。


たとえば、費用には、目に見える費用と、目に見えない費用があるが、目に見えない費用のうち、「時間」について記述した部分が印象に残った。

 例えば、講演料一時間一〇〇万円と言われる某経済評論家にとって、時間は金のなる木である。彼にとっての一時間はまさに一〇〇万円の収益を生み出せるものであり、何か他のことを一時間することはその一〇〇万円を失うことであると言ってもいい。つまり、彼は時間について、講演を行うときは、時間を「お金を得ることができる機会」を失った気分、すなわち費用と感じることだろう。経済学では、その犠牲にした行為の価値、失った価値を費用の一つとして「機会費用(opportunity cost)」と呼んでいる。ここでいう「時間費用」がそれにあたる。

御殿場にアウトレットモールがあるのは、

 これは、「価格の高い商品ほど、時間費用が気にならなくなる」からである。われわれは買うものの価格と時間費用の大きさを無意識のうちに比較して行動する。当然のことに、価格が高いものを買うときには時間費用は相対的に小さくなるので、時間が気にならない。価格が低い場合には逆に時間費用は大きくなるので、時間が気になる。

という理由で、また逆に、コンビニで買い物するのは、比較的少額なケースが多いので、時間費用が気になるからということらしい。


時間費用って、普段無意識では考えていることですけど、改めてこう指摘されるとなるほどなあと思いますね。
例えば、買いたいものがいくつかあったときに、あの店に行けば一度で揃うとか、でも、あそこの店は品揃え悪いから、あれないかもなあとか考えるのも、ある意味、時間費用を考えてるってことですよね。


あともう一つ印象に残ったのは、以下の部分。

 前述したように、価格は費用であると同時に価値を示している。具体的には、ある価格を設定することは、いくらかかるかという費用を示すと同時に、この程度の価値を持っているのだとアナウンスしていることになる。この二面性は値ごろ感に大きな影響を与える。

いわゆる、「安かろう悪かろう」ってやつは、こういうところからきているんだなあと理解しました。


普段自分が買い物をするときに、いろいろ比較検討したり、適当に買ったりしているわけですが、値ごろ感という心理が働いているということを理解すると、よりよい買い物ができるのではないかと思います。