「流れる星は生きている」読了
- 作者: 藤原てい
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2002/07/25
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内容的には、「生きることの意味―ある少年のおいたち」のある意味逆で、あちらは在日朝鮮人の立場で書かれていましたが、こちらは在朝日本人の立場で書かれています。
戦後から三人の子供を連れて帰国するまでの間の苦難行を記した物語です。
終戦になったのに、まるでそこから戦争が始まったかのような雰囲気で、食べ物がない、着るものがないで、餓死者が出るなど壮絶です。しかし、人間極限状態になったら平気で人を騙すし、自分さえ良ければいいというような態度ばかりで、道徳のかけらもないのですが、生死がかかった場面で道徳もないでしょうね。
しかし母は強しです。
朝鮮半島を南へ、38度線を目指して南下を始めるシーンで、
私は右手に正彦を抱きかかえ、左手に正広の手を持って、咲子を背にリュックを首にぶら下げて人の群の後を追った。
とさらっと書いてありますが、これがいかに大変か。
さらにいくつもの山を登ったり下りたり、ほんと死ねます。
生きる執念もすさまじいのでしょうが、やっぱり母は強しなんでしょうね。
戦争の被害者というと、とかく特攻隊とかが思い浮かびがちですが、こうした被害者もいたのだということを知るべきでしょうね。