ITコンサルの日常

ITコンサル会社に勤務する普通のITエンジニアの日常です。

「大地」読了

大地 (1) (新潮文庫)

大地 (1) (新潮文庫)

大地 (2) (新潮文庫)

大地 (2) (新潮文庫)

大地 (3) (新潮文庫)

大地 (3) (新潮文庫)

大地 (4) (新潮文庫)

大地 (4) (新潮文庫)

中国を舞台にした長編小説。
物語は大きく三つに分かれていて、

  • 王龍(ワンロン)が百姓の身分から、奴隷の妻をもらい、徐々に土地や金を増やして立身出世していくストーリー
  • 王龍の三人の息子、王大(ワンター)、王二(ワンアル)、王虎(ワンフー)それぞれ、土地の管理人(兼遊び人)、穀物商人、軍人として活躍するストーリー
  • 王虎の息子、王淵(ワンユアン)を中心に、中国の新時代を迎えるストーリー

という感じだったりします。


龍時代は、とにかく努力して、農地をどんどん買い集め、
一度は飢饉に見舞われて一家飢え死にの危機に見舞われるも、
しまいには金持ちになり、自分では働かなくても良い身分となります。
努力をすれば報われるを地で行くストーリーって感じですね。


古き良き時代の風習で、妾をめとってしまう辺りはいただけないなあと。
正妻はほっぽらかしっぱなしだし。
こういう時代錯誤的なことを読めるのも、時代小説の醍醐味だなあと思います。
結婚相手は親が決めてしまうとかね。


続いて、王龍の息子時代。
王大と王二のやりとりも、いつも弟の王二の方が賢くて、兄の王大をやりこめていたり、
非常に面白いのですが、ここでの主人公はなんといっても王虎でしょう。


父から受け継いだ土地を元に、地位を確立していった兄達とは別に、
軍事力に訴えて立身出世していくわけです。
最初は小軍閥に所属し、次に小軍閥を裏切り自分の軍閥を起こし、
さらにはある地方を占拠し、一時代を築いていくというような躍進ぶりがよく描かれています。
戦争は良くないのですが、なぜか戦争ものの物語は面白く感じてしまいます。


最後は王虎の息子の王淵の時代。
ここでは、西欧文化を取り入れた新しい時代の中国が描かれていて、
新しい中国を作るための革命軍に王淵も加わるのですが、
逆に旧来の勢力によって、革命軍狩りが行われたために、
一路アメリカへ逃亡することになる。


ここで革命について詳しく書かれていれば面白かったのでしょうが、
舞台はアメリカに移ってしまったため、
王淵青年の内面が描き出され、半ば恋愛小説のようになってしまったのが残念でした。


というわけで、中国の変革と、その時に代々生きていた王家の人々を描いたという意味では、
日本の戦争を含む時代と、その時に代々生きていた佐藤家の人々を描いた、
佐藤愛子の血脈にも似てるなあと思いました。