「不機嫌の時代」読了
- 作者: 山崎正和
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1986/02/05
- メディア: 文庫
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作品の部分を引用し、それに解説を加えるというスタイルで書かれていて、
ベースとなる作品を知らなくても、読めるように工夫されています。
「不機嫌の時代」というタイトルなのですが、「不機嫌」という感情そのものの解説書のようでもあり、
その意味では、僕は、志賀直哉の作品を解説している以下の部分が、特に分かりやすかったと思います。
興味深いことであるが、ここで信太郎は明らかに自分の不機嫌を恐れてをり、できることならそれがさらに昂まるやうな自体になるのは避けたいと願つてゐる。もう少し祖母が遠慮をしてゐれば、「それに免じて起きてやらう」と自分にいひ聞かせ、その善意を鈍感な祖母が踏みにじりはせぬかと、彼は「不安」をすら感じてゐる。不機嫌にいつたん火がつけば、それによつて苦しむのは誰よりも自分自身であり、しかもそれを晴らす適当な方法もないことを、信太郎はあらかじめ知つてゐるからである。そして、その祖母が無神経にもふたたび寝室へ踏み込んで来ると、彼の屈折した感情は爆発して、いきなり次のやうな幼い飛躍を見せることになる。
それ(不機嫌)によつて苦しむのは誰よりも自分自身であり、しかもそれを晴らす適当な方法もない
っていうのは苦しいですよね。
きっと、相手の自分への理解が、不機嫌を解消する方法なのでしょうが、
上述のように、相手が自分の不機嫌に気づかずに、さらに不機嫌を煽るような行動をしたときには、たまりません。
怒りをぶちまけるか、我慢してなおさら不機嫌になるか、
どっちにしても良いことはなさそうです。
解説には、時代背景的なもの(日露戦争とか)が影響したのではないか
と書かれていましたが、むしろ現代の方が不機嫌の元は多いのではないでしょうか。
しかも、解消法については書かれていません。
探したら、こんな良エントリを見つけました。
人はなぜ不機嫌になるのか。|好きなことで輝こう!国際イメージコンサルタント&コーチ大洲早生李のひたむきブログ
人に解決を求めてはいけないのですね。やっぱり。
以前紹介した「100%幸せな1%の人々」という本の、
「イライラさせる人」とは、相手の行動に対して自分がイライラするから、その人がイライラさせる人になるのであって、自分がイライラしなければ、その人はイライラさせる人にはならない。
つまり、最初からイライラさせる人は存在しないのだ。
に近いものがあるかなあ。
「不機嫌」を知るための本書、いかがでしょうか。