ITコンサルの日常

ITコンサル会社に勤務する普通のITエンジニアの日常です。

「もの食う人びと」読了

もの食う人びと (角川文庫)

もの食う人びと (角川文庫)

またしてもすごい本が現れました。
内容は、「旅立つ前に」に書かれた以下の文章が尽きると思います。

人びとはいま、どこで、なにを、どんな顔をして食っているのか。あるいは、どれほど食えないのか。ひもじさをどうしのぎ、耐えているのだろうか。日々ものを食べるという当たり前を、果たして人はどう意識しているのか、いないのか。食べる営みをめぐり、世界にどんな変化が兆しているのか。うちつづく地域紛争は、食べるという行為をどう押しつぶしているか……それらに触れるために、私はこれから長旅に出ようと思う。

で、飽食とか言われている日本を旅立って、いきなりバングラデシュで「残飯を食らう」と始まるのだから、すごすぎます。


地域紛争についても触れられていますが、なかでも悲惨なのが「ミンダナオ島の食の悲劇」です。
残留日本兵が現地民を食料としてしまった件について、特に象徴的だったのは以下の部分。

村人たちは口々に言ったのだ。
「母も妹も食われました」
「私の祖父も日本兵に食われてしまいました」
「棒に豚のようにくくりつけられて連れていかれ、食べられてしまいました」
「食われた」。この受け身の動詞が、私のメモ帳にたちまち十個も並んだ。

すでに「もの食う人びと」じゃないですし、いくら戦争で極限状態にあったといっても、これほど悲惨な出来事はないでしょう。


解説でも大絶賛されてますが、僕は「ジャーナリズム」ってのはこういうものをいうのだというのを、見せられたような気がしました。
世界の歴史に触れたい人にもお薦めですが、案外マスコミを目指す学生さんが読むといいかも。